女探偵と魔法使い

バレンタインメーカー&デートメーカー

 静かな室内。サトリ、マサチカが書類を捲る音と、メイがポッキーをかじる音だけが響いている。その部屋へ、ノックの音もなく飛び込んできたのはミズホ。
「作者がネタに困ったときやってしまうことってな〜んだ」
 メイはなれた様子で、無視してポッキーをかじっている。戸惑い顔のマサチカ。サトリはいぶかしげな様子でメイに視線を送る。メイは沈黙したまま。サトリの視線がマサチカに向けられ、マサチカが困惑気味に言う。
「突然どうしたの、ミズホちゃん」
「な〜んだ」
 ミズホは同じ言葉を繰り返す。説明する気はないらしい。戸惑い顔でマサチカはサトリを見やり、サトリも困った顔でメイを見る。メイは面倒くさそうな様子で、
「面白くもない企画もの」
ぼそりとつぶやく。
「大正解♪ さっすが先生!」
 楽しそうにミズホ。
「名探偵だから当然だわよ」
 楽しくなさそうにメイ。ポッキーの袋を新たに開ける。
「ってことで、マサチカさん。チョコレートどうぞ」
「えぇっと……」
 理解できない顔のマサチカにラッピングされた箱を3つ押し付けるミズホ。妙に楽しげな顔をしている。
「さぁさぁ開けてみてください! 誰からでしょうねぇ」
「ミズホちゃんから、じゃないの?」
 言いつつも、まんざらじゃない様子で包装を解いていくマサチカ。

一つ目。



「先生……からだ」
 マサチカは言いようのない顔でサトリを見やり、礼を言う。サトリは首を傾げていたが、やがて、
「…あぁ、そういえば」
 サトリは何かを思い出した様子。
「この間、ミズホちゃんが言っていたのはこのことだったの?」
 何か裏でやり取りがあったらしい。

二つ目。



「嫌なメッセージだね、これ」
 マサチカの嫌味に、ミズホは真面目な顔で、
「先生への仕送りが、私のお給料になるんですから当然です。きっちり慰謝料は支払ってください」
「まだ僕達、別れてないよ」

三つ目。



「顔…だけ?」
 マサチカはメイを見やる。
「これは喜んでいいことなの?」
「…長い文章の中からそこだけ抜き出すと、良い風に取れるわよね」
 メイは顔を背けて言う。どうやら長文の一部だったらしい。うまいこと抜き出したとミズホを褒めた方が良いのだろうかとマサチカは思案する。
 気まずい空気を読むことなく、ミズホは懐から、新たに包みを取り出す。
「先生にもチョコレートありますよ。さぁどうぞ。開けてみてください」
「…ありがと」
 ありがたくなさそうな顔でメイは言い、包装をとく。



「ふーん」
 じろりとマサチカを見やるメイ。
「へぇ…私の連絡先、知らないんだ」
「知らないわけ無いだろ。知ってる、知ってるよ今は。
 ちょっと待ってよ、ミズホちゃん。この下のハートマーク何? どんな意味?? 僕、いつこんなこと言った? 何で僕の名前でチョコレートなんで作ってるんだよ」
 マサチカが慌てた様子でミズホに詰め寄る。
「アハハ。冗談じゃないですか。気にしないでくださいよぉ。そうだ、マサチカさんに良いものをお見せしますね」

「何だよこれ。あれ…ミズホちゃんは?」
「帰ったわよ、あの二人なら。それより、マサチカ遊んでないで仕事」

2011/08/10 美村は間違い。深村です。ミムラって読みは決まっていたものの、漢字を途中で変えたのです。
2011/07/21 訂正
2009/07/04 記
バレンタインメーカーデートメーカー(@うそこメーカー

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