ホタル

今年もホタルが飛んでいる

ホタルがふわり
私の前を横切る

私はたった一人きり
暗い夜道をかけてゆく

ホタルを独りで見てはいけないという
魂が魅入られてしまうから。
もう、戻れなくなってしまうから。

私はたった一人きり
暗い川辺を静かに歩く

天の川に迷い込んだんだ
見紛うばかりの光の渦

私はたった一人きり
夜露に濡れた草の上、立ち尽くしている

そこが高い川淵かわぶちであることなど……
そこに奈落ならくがあることなど……

私はたった一人きり
いざなわれるように足を踏み出す

01/06/04

〔04/03/23〕修正。

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