Christmas Rose

 何ぞこれ。
 読み終わった感想が、まずそれ。
 なんていうか、そもそもこのタイトルは何なんだって話。
 『Christmas Rose Murder Case』日本語訳するならば『クリスマスローズ殺人事件』。クリスマスにはうってつけのステキタイトル。
 作者は聞いたことのない、カタカナの外人名。けれど、著者紹介見れば、生まれも育ちも両親も日本人と書かれている。
 写真は街中でよくみかける、ガードレールに軽くお尻をのっけて、ぼんやりしてるおっさんの斜め後ろ姿。はっきり顔は写っていないが、体型はアジア人。
 表紙とタイトル見たら、すっごくクリスマスローズが印象的なというか、もしくは重要な役割を持つミステリだと誰もが思う。タイトル見たら。それが私の記憶している限り、登場したイメージがない。花どころか、アイテムにもその名前がついていなかった。
 内容は、本格ミステリ。言わゆる閉鎖された空間での常識的には考えられないトリックを使った殺人事件。そう、ミステリ好きが三度の飯より好きなやつ。
 だから期待してこの本を購入したわけ。クリスマスローズ殺人事件なんて、クリスマスイブに独りでクリスマスケーキを食べながら読んだらピッタリな本だって思ったから。ミステリ好きなら誰もがやってる殺戮とトリックの聖夜。
 ところがどっこい。読み終わったらもやもやしまくりなわけ。本格推理を読み終わった直後の、さわやかすっきり感が皆無なわけ。ありえない。本当に無理。何この最悪のクリスマスは。
 海外ミステリだと思い込んで読んでたものだから、終盤までクリスマスローズが出てこない展開に何も疑問を持たなかったのよ。翻訳ものって、本国で絶賛されてるって紹介文あっても、半分くらい読まなきゃ何が面白いのかさっぱりわかんない本ってあるものだから。
 私みたいなB級好きでも、下手にあらすじに騙されると腹立たしいだけ。閉ざされた館での殺人なら、館ものでよかったのではないだろうか。惨殺事件があったかのように裏表紙には書かれていたのに、実際はただの毒殺だし。しかも、その毒ってクリスマスローズなのかと思ったら、ただの青酸カリだし。なんだよ、青酸カリって。チープすぎるだろ。もっと他に毒物あるだろ。
 評価としては、タイトル替えて、あらすじももちろん替えて、表紙もクリスマスローズ前面に押し出すのをやめろと言いたい。そこのポイントだけ押さえれば、当たり障りない普通の本格推理として認められる。普通に読める、とんでもじゃない本格推理。
 ここまで書いて思いついたんだけど、クリスマスローズの花びらは5枚。もしかして、殺された人の数を掛けてた? だったとしても、わかりにくすぎる。

ご覧いただきありがとうございました。〔2020/05/25〕

お題配布元:Discoloさま クリスマス5題

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